坂本花織選手が、北京オリンピックフィギュアスケート女子シングルで、日本女子3大会ぶりのメダル、銅メダルを獲得しました。
もう2日前のことですが、ジワジワと感動してきています。
坂本花織選手の銅メダルの価値を考えてみたいと思います。
巷でもよく言われているように、坂本選手には大技はありません。
質の良い3回転ジャンプ、スケーティングのスキル、芸術性等々の総合力で、今回勝負しました。
坂本選手は、本番でやるべきことを全部やりました。そして、ロシア女子の一角を崩したのです。
確かに、ワリエワ選手の散々なミスに助けられた感はあります。
ですが、誰かがミスして順位が入れ替わるなんて、フィギュアスケートではよくあること。
まさに、人事を尽くして天命を待った坂本選手の勝利だったのです。
優勝したシェルバコワは、高難度ジャンプにプラスして芸術性があると評されます。
しかし、その芸術性というのは、あくまで採点で評価されるための芸術性ではないでしょうか。
本当に人の気持ちを動かす、感銘力ある芸術性でしょうか。
例えば、かつてのカタリーナ・ビットのカルメンのような、後世に語り継がれる名演とは到底言えないと思います。
私は、彼女のプログラムの振り付けや曲を全然思い出せません。
それに引き換え、坂本花織選手のプログラムは、ショートもフリーも、非常に印象深いものでした(この点は樋口新葉選手も全く同じですが)。
見終わった後に余韻が残り、後に、あの時のあのプログラムと語ることができる、そんな名演でした。
そして、そういう魅せるプログラムを披露することこそが、フィギュアスケートの本質だと思うのです。
坂本花織選手の銅メダルは、そういう本質が評価された結果であったと言えると思います。
高得点は出るけれど、面白くもなんともないスケート、そんなもので上位陣が埋め尽くされ、良さが失われかけていた女子シングルを救う、坂本花織選手のメダルでした。
こういうスケートが、今回のオリンピックを境に復権してくれることを願います。
余談になりますが、名演という意味では、宮原知子選手のトスカは誰にも真似できないプログラムです。
彼女のトスカをオリンピックで見たかった、このトスカこそオリンピックに相応しかったと、そんなふうにも思ったのでした。